今回のssyブログでは、前半の加速局面がトップスピードを決定づけるについて書いていきたいと思います。
短距離を速く走るためには、いろいろな要素を併せて、スピードを高めていくこととなると考えています。
今回は前半の加速局面がトップスピードを決定づけると考えているので、どういうことか書いていきたいと思います。
短距離、特に100mを速く走るためには、効率よくトップスピードを高めることが非常に重要だと考えています。
でも、トップスピードって何が決定要因なのか?
ということを考えている方も少なくないと思います。
私は、元指導者で、全国大会出場、優勝した選手を輩出した経験がある為、経験も踏まえて書いていきたいと思います。
トップスピードを高めるために必要な要素
短距離、特に100mを走ることを例にして書いていきます。
では、100mを走るうえで前半の加速局面でトップスピードが決定されると考えています。
(小林,2011)によると加速局面前半に大きな走加速度を獲得することが,加速局面中盤以降の走速度の有意差につながることが示されたという報告があります。
前半の加速局面でしっかりとスピードを高められていればレース後半もスピードを高める、もしくは維持しながら、もしくは減速をおさえながら走ることが可能だということです。
では、加速局面前半で走加速度を獲得するにはどうすればいいのでしょうか?
走加速度を獲得するには
関節伸展トルク、関節屈曲トルク等がかみ合って、走加速度を獲得していきます。
難しいかと思いますので、画像をつけておきます。
要は、関節が伸展する力を利用しながらをしっかりと使い、地面に伝え、そして伸展した関節を屈曲する力も必要ということなんです。
(小林、2011)によると、下肢三(股、膝、足)関節のすべての局面で競技レベルの高い短距離選手
が有意に高値を示したことから,接地期における下肢三関節トルクの発揮能力が,加速局面の大きな力積の獲得につながると考えられる。
という報告があるように、関節が伸展したパワーを上手く地面に伝えていくということが速く走るための必要な要因と言われています。
でも、これって意識すること?なのかということです。
どうすれば前半の加速局面で走加速度を得られるのか
では、どうすればいいのか?
物理的な要素が出てきて、かなりややこしく感じてしまう為、それでは簡単に私の考えを書いていきたいと思います。
股関節伸展力を高める
股関節伸展力を高める為のトレーニングが非常に重要だと思います。
股関節伸展の補助として、必要最低限で膝は伸展を行います。
つまり、膝関節そのものが主体的に動作を行うことはマイナスに働いてしまいます。
例えば、スクワットで膝が前後してしまうと、膝の伸展が主動作となってしまい、股関節伸展の力を地面に伝えるということは難しくなってしまいます。
走りにおいては、膝が伸展しきってしまい、スイングされるタイミングが遅くなり、接地のタイミング脚が遅れてしまっている状態のことですね。
股関節伸展力を高めるには、どんなトレーニングが有効なのでしょうか?
いくつか方法はありますが、ここでは2つご紹介いたします。
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ランジ
ランジって聞いたことありますか?
私は、走りを修正する際に、ランジをすることがありますが、股関節伸展のトレーニングの一環として行うの非常に有効だと考えています。
動画をご覧ください。
■ポイント
・膝を動かさずに、膝の上に骨盤を立ち上げる
・四頭筋(前腿)に負荷をかけない
・臀部で負荷を受け止める
上記のポイントを守りながら行うことで股関節伸展力を高め、そして疾走時の膝下の振り出しの抑制にも期待できると考えています。
膝下の振り出しを抑制することで接地位置を遠くにつかないように癖づけることが可能だと考えています。
また、膝伸展を必要最低限に抑制することができる為、動きがいい意味でコンパクトになる効果が期待できます。
ランジを行った後の膝下の振り出しと、膝伸展を抑制した走りの動画を以下に貼っておきますので、参考にしていただけると幸いです。
スクワット
膝を前後に動かないように固定し、膝の上に骨盤を立ち上げる。
そして、連続で行えるように、重りを上手く使い、負荷を跳ね返すようにテンポよく行うことが非常に重要です。
詳しくは、コチラの記事を見ていただけばと思います。
ここで期待したい効果は、ランジと同様で、
・股関節伸展力を高めること
・膝下の振り出しを抑制
・膝伸展の抑制
です。
アップとしても有効ですし、私はスクワットはドリル的位置づけとして行っています。
重心移動をきっかけとしたスタート
股関節伸展力を高めるだけでは、実際の走りに効果があるのかは見えづらいです。
だからこそ、実動作に近い動作(スクワットや、ランジ等)で鍛えたスキルを走りの中に落とし込む必要が出てきます。
トレーニングの中で一番時間をかけることをオススメするのは、このスタートからの動き出し、つまり30mの距離を効率よく走るトレーニングに一番時間を費やすことで、動作を自動化(癖づける)ことが
私のブログでは何度も出てくる言葉ですが、重心移動をきっかけとしたスタートを行うことで、ロスなく重心を前方へ効率よく進めることができます。
このスタートから30mをしっかりと走れないと、この記事のテーマでもあるトップスピードは高めることができないのです。
つまりは、重心移動をきっかけとしたスタートを行うことで、しっかりと走加速度を獲得し、中盤以降の走りに繋げていくことができると考えています。
■ポイント
・垂直軸をつくる
・シューズの外側ラインが進行方向にむくように
・骨盤前傾(上体前傾)をつくる
上記、3点を守った上で、
重心移動を第一動作として歩く
重心移動を第一動作として、まずは歩いてください。
意外に難しいかもしれません。
重心が前方に送り出される前に、足を先に出してしまわないように注意してください。
上手く重心を送り出した力を利用できれば、足がスタスタスタと自然と出てくると思います。
この足が自然とスタスタスタと出てくる距離を伸ばしていくことがとても重要です。
重心移動を第一動作として走り出す
次は、重心移動を第一動作として、走り出してみましょう。
動画を貼りますので、参考にしていただければ幸いです。
この感覚を養うことで、自動化(癖づけ)させて無意識でできるようになればレースでも自然と表現することができると思います。
そして、スターティングブロックではこのように行います。
別の記事で詳しく書いておりますので、興味を持っていただける方はそちらをご覧ください。
短距離走でトップスピードを高めるためには
トップスピードを高めるのは、前半の加速局面の走加速度を高めることが必要となります。
つまり、前半の加速段階でうまくスピードに乗れていないと、トップスピードを高めることは難しいということです。
前半の加速局面で走加速度を高めるためには、下肢三大(股、膝、足)関節トルクを発揮することが重要です。
股関節伸展を上手く行えば、股関節伸展の補助として必要最低限、膝関節の伸展が行われるため、スクワットや、ランジ等のトレーニングで股関節伸展力を高めることをオススメします。
そして、重心移動を第一動作としたロスのないスタートから動きによって、前半の加速局面で走加速度を高めることできると考えています。
上記を走りの中でそろえることができれば、トップスピードは高まると考えています。
他にもいろいろと方法はあるかもしれません。
ただ、私は指導者として選手に指導を行っていた経験があります。
ジュニア期については、スクワットは重りを持たずに自重で行うことをオススメしますが、上記のように指導を行っていた結果、全国大会出場選手を輩出することができました。
選手の努力が一番大きい要素ですが、上記のようなトレーニング構成で、しっかりと結果を出していた選手がおりますので、参考にしていただければ幸いです。
参考文献
(1)小林海 研究指導教員: 川上 泰雄 教授(2011)
競技レベルの高い陸上短距離選手における走速度の決定因子:短距離走の加速局面を対象として
(2)馬場崇豪, 和田幸洋, & 伊藤章. (2000). 短距離走の筋活動様式. 体育学研究, 45(2), 186-200.
・久野譜也, 金俊東, & 衣笠竜太. (2001). 体幹深部筋である大腰筋と疾走能力との関係 (特集 スポーツにおける体幹の働き). 体育の科学, 51(6), 428-432.
(3)小山裕史
『奇跡のトレーニング 初動負荷理論が「世界」を変える』講談社