今回のssyブログでは、スプリントにおける股関節伸展の重要性について書いていきたいと思います。
短距離を速く走るためには股関節伸展のパワーを高めること、そして上手く使うことが非常に重要になります。
股関節伸展?
股関節伸展って耳にしたことはありますか?
股関節伸展とは文字通り、股関節が伸展することです。
股関節伸展は、短距離を速く走るためには凄く重要なのですが、直接的に股関節伸展を意識するのはなかなか難しいかなと思います。
もし頑張って力強く走っているのにスピードが高まらないということで悩んでいらっしゃる場合は、参考にしていただければ幸いです。
では、そもそも何故、股関節伸展が重要なのかを書いていきます!
股関節伸展は重要?
走るうえで股関節伸展は重要です。
何故なら、地面に対して股関節が伸展したパワーを伝えることで走っているからです。
接地の際に、軸足の股関節の角度が、離地の際には大きくなっています。
この股関節が伸展するパワーを地面に伝え、推進方向へ転換していくのです。
(貴嶋ほか、2008年)によると、
股関節最大伸展速度はスタートから中間疾走にかけて疾走速度の増加にともない有意に増加した
という報告があります。
これから、股関節伸展は疾走速度に大きな関係があり、スピードを高める上でも、股関節最大伸展速度はとても重要と言えると考えています。
ただ、実際は股関節伸展を意識するというよりも、臀部等を意識することで、股関節伸展を引き出していくことをお勧めします。
股関節伸展ではなく臀部を意識?
ここからは、私の経験を含めて書いていきたいと思います。
股関節伸展となると、脚を後ろまで伸ばせばいいの?と疑問に思うかもしれませんが、そうすると地面にパワーを伝えることが難しくなるため、走るという動作においては、股関節伸展の動作そのものを意識するというよりも、接地の際に体重を体のどこで受け止めるイメージを持つかが非常に重要だと考えています。
私は臀部で体重を受け止め、地面をおさえることを大切にしています。
何故なら、臀部で受け止めることができないと、上手く地面にパワーを伝えることが難しいからです。
臀部で体重を受け止め、同時に地面をしっかりと臀部でおさえる。
そうすることができれば、意識的に地面を蹴ったり、押さずとも自然と股関節から地面を押してくれるようなパワーが出力されるのです。
股関節が伸展するには、しっかりと体重を臀部で受け止め、体重を跳ね返すことが求められるからです。
この動作について、何かに似ていると感じませんか?
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股関節伸展力を高めるためのスクワット
短距離を速く走るための股関節伸展力を高めるためには、スクワットは有効なトレーニングのひとつです。
特に踏ん張るスクワットよりも、SSCの出力形態でのスクワットが有効だと考えています。
SSCとは、ストレッチ・ショートニング・サイクルの略で、筋肉の一連の動きのことです。
弛緩(リラックス)→伸張→短縮
をひとつのサイクルと考え、動作を行うことです。
そうすることで、筋肉は伸ばされると、縮もうとする働きがあるため、筋肉が縮もうとする力を利用すれば、自然と大きなパワーが出力されるのです。
実は走ることにおいても同様なのです。
簡単にお伝えすると、ハムストリングの弛緩→伸張→短縮を利用し、出力されたパワーを上手く地面に伝え走ることで高いスピードが得られるのです。
できる限り、踏ん張るのではなく、負荷を臀部で受け止め跳ね返すというのを意識して行うことで、疲労感は少なく、どんどん体がほぐれてくるような感覚に近づいていくかと思います。
臀部で体重を受け止めるためには
臀部で体重を受け止めるためには、身体ポジションと重心に対しての接地位置が非常に大切になります。
身体ポジション
腰は反らないように注意をします。
腰を反ってしまうと、体重をしっかりと受け止めることが難しくなります。
そして、腰を反ることは、接地位置をより重心から遠ざけてしまうことにもつながります。
接地位置について
重心よりも前方の遠い位置で接地してしまうと、四頭筋で体重を受け止めることになるため、臀部で体重を受け止めることが難しくなってしまいます。
身体ポジションと接地位置に気を付け、臀部で体重を受け止め、地面をおさえることができるようになることがとても重要です。
まとめ
臀部で体重を受け止め、地面をおさえることを意識的にトレーニングすることで、股関節伸展を上手く使い速く走れる動作を身に付けることが可能だと考えています。
また、臀部等の体のコア部分に意識をもっていくことで末端操作の癖の改善にもなります。
ただし、レースの中では、臀部で体重を受け止め、地面をおさえることを意識的に行うことではなく、無意識ので行えるようになることが理想です。
そのために、意識をするトレーニング、意識をしないで走るトレーニング等を使い分けを行い、無意識の中で行えるように準備を行っていくことがとても重要だと考えています。
特にスピードトレーニングの際は、意識を強く持ちすぎないようにすることがオススメです。
股関節伸展を上手く使うことができれば力感少なく、大きなパワーが自然と出力されていきます。
是非、参考にご自身の感覚と照らし合わせながら取り組んでいただければと思います。
参考文献
(1)貴嶋孝太、福田厚治、伊藤章、堀尚、末松大喜 、大宮真一 、川端浩一、山田彩、村木有也、
淵本隆文、田邉智(2008)
世界と日本の一流短距離選手のスタートダッシュ動作に関するバイオメカニクス分析―特にキック脚動作に着目して―
(2)小山裕史
『奇跡のトレーニング 初動負荷理論が「世界」を変える』講談社