速く走るために腿あげは必要なのか?

トレーニング

今回のssyブログでは、速く走るために腿あげは必要なのか?を書いていきたいと思います。

走る時に、『腿をしっかりあげて走りなさい。』と、指導されたことはないですか?
私は、学生時代に、そのような指導を受けていました。
実際、速く走れる人は、腿があがっている人が多いです。

では、『腿をあげようとして走っているのか?』これについては、そう考えて走っている人もいるかもしれませんが、少数派だと考えています。

その為、【速く走るためには腿あげは必要なのか?】を書いていきたいと思います。

速く走るためには腿あげは必要なのか?

腿があがるかは接地する際の身体ポジションの結果によって起こる現象だと考えています。
つまりは、タイミングとスキルの問題なので、レベルが高い選手は腿をあげようと思って走るというよりは、接地についてアプローチをかけようとしている人が多いのでは?と考えています。
では、どういう状況になることで、腿があがるのか?ですが、まずは動画をご覧ください。

速く走るために腿をあげる意識が必要なのか、まずは動画をご覧ください。

腿があがっているかと思いますが、これは腿をあげようとして走ってはいません。
接地する際に、しっかりと骨盤で地面をおさえようとする意識のみです。

腿があがる人ほど速く走れるのか?

(伊藤ほか, 1998)によると、学生~トップアスリートを対象に行った研究によると、疾走時のスピードと、腿の高さに関係性は見られないという結論が出されています。

ということは、、、、、、速く走るために腿上げの在り方は考え直す必要があると考えています。

ただし、結果的(無意識)に遊脚がスイングされて、腿があがっているのは問題がないと考えています。
つまり、見た目だけで判断するのではなく、速く走るための本質を理解してトレーニングに励むことが重要です。

何故、腿をあげて走りなさいという指導が存在するのか?

研究から、速く走るのに腿の高さは関係がないと証明されたのに、何故腿をあげなさいという指導があるのか?と考えてみたいと思います。

マック式ドリルの誤解

1970年に「マック式ドリル」の発案者であるゲラルド・マックが来日した際の講習会を機に伝わったトレーニングです。
当時、マックは世界の名だたる一流スプリンターを指導していたこともあって、この講習会には日本各地から参加者が集まりました。
これを機に日本では、陸上短距離の走りの基本動作、そのための指導方法として全国各地に広まることになったとされています(川本,2008)。

そして日本全国に「マック式ドリル」が伝わると同時に、「世界の最先端のトレーニングは腿上げ」という風に短距離走のトレーニングの主流であるとされるくらい大流行します。
そして、このドリルにみられるような

  • 「腿を高く上げる動作」
  • 「膝下を引き付けてコンパクトに折りたたむ引き付け動作」
  • 「膝下を前に振り出す動作」

が、「良い動作」なのだと、誤解がうまれてしまったことを誰も知る由なく、全国に誤った情報が伝わってしまったようです。

本当のマック式ドリルとは?

マック氏が「マック式ドリル」で本当に伝えたかった考えは、「腿の高さ」や「かかとの引き付け」といった、動作の「部分」ではなく、「素早く足を引き上げて、地面に強く踏み込む」という「一連の動作であったと言われています(邑木と大森,2015)。

マック式ドリルを指導時の写真の一部分を切り取った状態で判断してしまい、一連の動作ではなく、動作の部分だけを見てしまい、誤解が生まれたと言われています。

福島大学の川本氏によると、本人にマック式ドリルについて、本人と話をする機会があり、本来のマック式ドリルとは異なる理解で日本で普及してしまっていることに気付いたとのことで判明したようです。(川本,2008)

では、腿はあげなくていいの?

結論からお伝えすると、私は速く走るのに腿をあげる意識をする必要はないと考えています。

腿をあげる意識を持つ弊害

腿をあげるということは、本来地面に対してパワーを伝える必要がある、走るという動作に置いて、真逆の出力が必要となります。

地面に対してパワーを伝えたいのに、腿をあげることで地面に対しての出力が減少する。

腿をあげようとすることで、重心の上下運動につながり、水平移動を難しくすると考えています。
つまり、腿をあげにいくことは、速く走るのに不要だと考えています。

腿をあげるでなく、こうしたい!!

連続写真

腿は、接地の際に、体重をしっかりと臀部で受け止めることができれば、軸足が体を押し出すギリギリまで地面を押さえることができるので、地面反力により自然と遊脚は高くあがってきます。

※見づらい方は、動画をご確認ください。※左から①~➈までの写真をご覧ください。
①の時点で、既に腿がどこまであがるのか決まってしまっていると考えています。つまり、①の時点で③(左から)までは確定するのです。
決定づけるのは、②の時なのですが、②も①の動作でほぼ決まります。

接地時に臀部で体重を受け止めている瞬間


腿があがっていないということは、接地時に臀部で体重を受け止めること(骨盤で地面を押さえること)ができず、体を押し出す際に、ギリギリまで地面を軸足が押さえ続けることができておらず、重心が移動する距離も理想よりも短くなってしまいます。

結論

上記から、腿を高くあげる意識より、接地の際に股関節伸展が起こりやすいポジションで接地ができているのかを考えた方がいいです。
つまりどうすればいいのか?骨盤で地面をおさえたい(股関節伸展が起こりやすいポジションで接地したい)ということです!!!!

重心の少し前で接地する必要が出てくるのです!!!!
接地時に地面をしっかりとおさえることができれば、

軸足が体を進めるために、地面を押さえ続けている状況

上記の画像のように、股関節が伸展し、地面を軸足が押さえながら、骨盤を進めてくれます。
この動作をゴールまで繰り返していく必要があるのです。

見た目だけを真似して腿を上げにいくと、お尻が後ろに引けてしまったり、重心の上下運動等、ロス動作につながってしまいます。
私は腿上げなどのドリルなどは一切していないですし、指導してきませんでした。
走りのイメージ等を是非参考にしていただき、一度試してみていただきたいと思います!
腿をあげることよりも、接地をする際のポジションが大切だと考えています。そうすることで、結果的に腿があがると考えています。
参考になれば幸いです。

参考文献

(1)伊藤 章・市川博啓・斉藤昌久・佐川和則・伊藤道郎・小林寛道(1998)100 m 中間疾走局面における疾走動作と速度との関係.体育学研究,43: 260-273
(2)川本和久. (2008). 2 時間で足が速くなる!: 日本記録を量産する新走法ポン・ピュン・ランの秘密. ダイヤモンド社.
(3)伊藤章. (2016). 短距離走の科学: 選手・指導者に役立つ客観的事実. 陸上競技研究, 2016(4), 2-12.
(4)・邑木隆二, & 大森一伸.(2015) 陸上男子 100m 競技ジュニア・ユース選手における近年の発展に及ぼす要因. 駿河台大学論叢, (50), 159-168.

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